「明日の準抗告担当部は?」とは,愛知県弁護士会刑事弁護委員会編『勾留準抗告に取り組む』現代人文社(2017年)で,私が執筆を担当したコラムのタイトルです。
同コラムでは,事案が同一でも裁判体によって判断が大きく異なるという感覚を紹介したうえで,「申立てが1日遅れれば身柄拘束が確実に1日長引くことになるが,翌日の裁判体に判断してもらった方がよいのではないかと,真剣に悩むことが度々ある。さすがに現実に申立てを先送りしたことは一度もないが,このようなくだらないことで悩む必要などなくなってほしいと切に願うところである」というコメントで締めくくっています。
年末年始,まさに「くだらないことで悩む」ことがありました。
事案は,軽微な詐欺(賃貸借詐欺)被疑事件です。
12月31日,相弁護人が遠方まで赴いて被害者と損害賠償合意を成立させてくれ宥恕も得られたので,即日,準抗告(勾留決定に対するもの)を申し立てました。
依頼者に対しては「年末年始で検察庁が動かないので,その状態で釈放することに抵抗を覚える裁判所であれば,検察庁に対する”配慮”で棄却されてしまうかも」,「とはいえ,いくらなんでもさすがに通るだろう」と説明していましたが,早々に(申立てから約3時間後)棄却されました(担当刑事3部)。
1月1日,勾留延長決定(1月2日を12日まで延長)がなされたことから,2日,準抗告を申し立てたところ,3日,勾留延長決定が取り消され(担当刑事4部),依頼者は釈放されました。なお,12月31日~1月2日までの間,何らの事情変更もありません(黙秘している依頼者の取調べも含めて)。
実は,1月1日に依頼者と接見をした際,「2日に申立書は作成して当直受付まで持って行き,その場で担当部を確認して,〇部だったら申し立てる,×部だったら見送って翌3日に申し立てる」,「これはあくまで裁判体に関する私(弁護人)の感覚。それで1日遅らせてしまい,あなたが不利益を受けることは本来おかしいが,いいか」,「わかりました,お願いします」という馬鹿馬鹿しいやり取りをしていました。〇部に4部が含まれていたことから,2日に申し立てることができました(午後2時前に申し立てたら判断を翌日に回されたことについては,反省しています)が,×部が担当部だったら,現実に申立てを見送るつもりでした。
このようなくだらない悩みをしなければならないのは,しかしながら,依頼者(及び弁護人)にとっては,恐ろしいことだなと,心底思いました。
(古田宜行)