事例報告:取調べへの弁護人立会国賠 |古田法律事務所

事務所通信

2021年1月28日,2018年8月28日の事務所通信で紹介しました,弁護人が取調への立会を求めたところ依頼者が逮捕されてしまったことに関する国賠訴訟(名古屋地裁平成30年(ワ)第2753号事件ほか)について,判決の言い渡しがありました。

結論は,請求棄却。

理由は,これが「裁判」なのでしょうかと評するべき,非常にお粗末なものでした。

検察官による(再)逮捕状請求及び執行の違法性に関する判示部分は,以下のとおりです。

 

「取調べにおける弁護人立会権が認められるかについては,憲法上の解釈も含めて見解の対立があり,刑事捜査実務上は,従前から現時点においても,弁護人立会権を認めない運用が継続されており……,最高裁判所における明確な判断も示されていないことからすれば,現時点においては,身柄拘束を受けていない被疑者が,取調べについて弁護人の同席を求めることは当然の権利であり,捜査機関はこれに応じる必要があるとの解釈が確立しているとまではいえない」

「弁護人立会権に関する解釈が確立していない状況や本件逮捕状請求時における事情を総合勘案すれば,担当検察官において,取調べにおける弁護人の立会いの可否を巡って原告らと捜査機関が対立する状況が継続する中で,原告Xが有罪判決を恐れて罪証を隠滅し,又は逃亡するおそれが高まってきており,明らかに逮捕の必要性がないという状況ではないと判断することが,検察官として根拠の欠如した不合理な判断であるとまではいえない」

「担当検察官において,本件逮捕状請求時までに収集した証拠資料等のほか,刑事捜査実務上,弁護人立会権を認めない運用が継続されていることを前提として,その後の原告Xの対応状況を踏まえて検討した結果,前件勾留却下時と比較しても,原告Xについて罪証隠滅及び逃亡のおそれが存在すると判断したこともあり得ないわけではなく,検察官の合理的判断として,原告Xの逮捕の必要性が明らかにないと判断すべきであったとまでは認められないから,本件逮捕状請求及びその後発付された本件逮捕状に基づく逮捕の執行について,国家賠償法1条1項の違法があったとは認められない」

 

特に,コメントは,ありません(控訴審で頑張ります)。

(古田宜行)

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