「不当な別件捜査が行われるおそれ」を認めた準抗告認容決定 |古田法律事務所

事務所通信

1週間ほど前に,正当にも「不当な別件捜査が行われるおそれ」を認めて,勾留決定を取り消す準抗告認容決定を得ました(名古屋地決令和3年(む)第108号)。

事案は,大麻取締法違反(単純所持)。

先行する大麻取締法違反(営利目的譲渡)の事実で逮捕され,警察署で取調べを終えた後留置施設に入る際に,所持品から大麻が発見され,任意提出をしたというものでした(自筆の上申書も作成)。

その後,営利目的譲渡事件による20日間の勾留期間の満了日,同事件について「処分保留」とされ,同日,単純所持事件の逮捕状が執行されました。

(刑事事件をある程度こなしている弁護士であれば)誰がどう見ても,単純所持事件で逮捕,勾留する必要性はなく,①営利目的譲渡事件に関する取調べ(黙秘していた)と②(営利目的譲渡事件に関する取調べに際して黙秘したことに対する)報復として身体拘束を長期化させることのいずれかを目的としたものであることは,明らかなものでした。そのため,準抗告を申し立てました。

これまで,弁護人の目からは①②のような目的が明らかと思われる事案でも裁判所の腰は重かったのですが,最決平成30年10月31日の存在から多少は期待していたところ,準抗告が認容されました。

決定は,勾留の必要性を否定したものでしたが,それに「加えて,本件大麻の所持の目的等については不明瞭で解明されているとはいえないが,犯行目的等に関しては別件(大麻譲渡)とも共通するところがあり,本件と別件が別罪を構成するとしても,本件勾留を認めた場合,処分保留の先行事件(別件)に関する捜査を蒸し返し,不当な別件捜査が行われるおそれがあることも否定できない」と判示しました。

大麻の単純所持とはいえ,薬物事犯で勾留決定が取り消される事例はそれなりに珍しい(私の経験では2件目)ため,裁判所も,「不当な別件捜査が行われるおそれ」を相当程度考慮してくれたのだと感じました。

公益の代表者たる担当検察官(名古屋地方検察庁公安部廣瀬功副検事)は,果たしてどのような「公益」を実現するために逮捕を指示し,勾留を請求したのか,理解に苦しむところです。

(古田宜行)

 

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