防犯カメラについてプライバシー権等に基づく妨害排除請求を本案とする、防犯カメラ管理者を相手方とし、防犯カメラによって撮影、記録された映像データを対象とする証拠保全を申し立てたところ、これが却下されたため、抗告し、認容決定を得ました(名古屋高決令和6年4月9日)。
もともと、防犯カメラ管理者の関係者に対し、別事実に基づく損害賠償請求+差止請求を認容する確定判決があるにもかかわらず、原審の当初の担当裁判官(名古屋地裁民事4部池田幸子裁判官)が、わざわざ合議に付した上で、却下されました(安田大二郎裁判官、池田幸子裁判官、吉川この実裁判官)。
防犯カメラによって「どこが」、「どのくらいの時間」、「どのような画質で」、「音声有/無で」記録されているのかは、誰がどう考えてもプライバシー侵害の有無及び程度を判断するにあたって重要です。
却下決定は、まさに「へそで茶を沸かす」と言える内容でしたが、とりわけ、以下の内容はひどいものでした。
当方が、相手方が先行する事件で防犯カメラ(証拠保全の対象とは別のカメラ)のデータを提出してきた上、それ以外のデータ(相手方にとって不都合な可能性が高いデータ)の提出を求めたところ、要旨「一定期間で自動的に映像データは消えるから存在しない」と主張していたことを引き合いに、都合が悪いデータについて「自動的に消えたから存在しない」などと主張する可能性を保全の必要性との関係で指摘したところ、裁判所は、「本件カメラによって撮影、記録された動画についても、既設置カメラによって撮影、記録された動画と同様、一定期間経過後、順次、上書きされていくものと思われるが、新しい動画が、順次、撮影、記録される以上、相手方が故意に本件電子データ(※撮影されたデータ)を削除又は隠匿するとも考え難い」などと判示しました。
なぜ、「一定期間経過後、順次、上書きされていく」という相手方の供述内容の真実性が前提とされているのか。
なぜ、本件の対象カメラとは別の「既設置カメラ」と「同様・・・と思われる」のか。
なぜ、順次撮影、記録される「以上」、故意に削除又は隠匿するとは考え難いのか。
理解不能でした。
大方、担当裁判官が、「個人宅の防犯カメラ映像の検証手続のため、個人宅に入るのは嫌だ」とでも思ったのでしょう。
抗告で取り消されたのは、当然の結論であったと思います。
(事実経過)
2023年8月30日 証拠保全申立て
9月29日 却下決定
10月29日 抗告申立
2024年4月29日 抗告認容、原決定取消し(差戻し)