事例報告:身体拘束裁判 |古田法律事務所

事務所通信

<事案の概要>

酔っ払って店で暴れた後、警察が駆けつけて一応落ち着き、警察が自宅まで同行して帰宅するも、自宅から模造刀を持ち出して警察に渡した。

 

<経過>

A日 銃刀法違反で現行犯人逮捕

A+1日 同勾留、受任。以降、一貫して取調べ拒否

A+3日 勾留決定に対する準抗告

同  日 同棄却決定(刑事5部)。いわく、「本件の直前にトラブルを起こした店舗の関係者等と接触するなど」の罪証隠滅のおそれがあると。

A+7日 検察官から電話。いわく、「被疑者方の捜索を実施しないと処分が決められないと警察が言っているから捜索を実施する」と。

     ※処分を決めるのは検察官。被疑者方は事件当日から判明。

A+8日 勾留延長決定(大村麻衣裁判官)。延長理由には「被疑者方捜索未了」、「証拠物解析精査未了」、「被疑者取調べ未了」と。

     ※10日目が土曜日なので、延長期間は9日。

A+9日 勾留延長決定に対する準抗告

同  日 同(一部)認容決定(刑事6部)。延長期間を6日に短縮

A+10日 被疑者方捜索実施

この間  何もなし

A+16日 処分保留釈放、「店で暴れた」ことについて建造物損壊で逮捕

A+18日 同勾留

A+19日 勾留決定に対する準抗告。

     ・建造物損壊の事実は、銃刀法違反事件で勾留の理由とされていたから不当な蒸し返しであること、

     ・建造物損壊の被害者とされる建物所有者が、A+2、3日の時期及びA+19日に警察から被害届の提出を求められたが拒否したこと

     などを指摘。

同  日 同棄却(刑事3部・吉田裁判長)。いわく、「店舗責任者に働き掛けるなど」の罪証隠滅のおそれがあると。

A+23日 勾留取消請求

同  日 同却下(大村麻衣裁判官)

A+24日 同却下決定に対する準抗告

同  日 同棄却(刑事4部・久禮裁判長)。いわく、「被害者の特定にはなお捜査を要する状況にある」と。

A+28日 勾留満期(A+29日)前に処分保留釈放

 

<コメント>

・「警察官が処分を決められない」と述べて、勾留9日目に被疑者方の捜索差押えに着手し、それを勾留延長の理由として主張する検察官

・それを認め、しかも被疑者が取調べをすべて拒否しているのに「被疑者取調べ未了」を理由に勾留延長を認める裁判所

・銃刀法違反事件の当初から、建物所有者が被害届を提出しないと言っていたのに、それを秘して、また、2週間以上放置して、建造物損壊で逮捕する警察

・それを受容して、銃刀法違反と同じ理由で勾留を認める裁判所

・4(5)日後には検察官が自ら勾留延長請求をせずに釈放する事件について、勾留を維持する裁判所

建造物損壊事件で、準抗告に対する判断の電話が「刑事3部」と「刑事4部」からかかってきた時点で、お察しでした。

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