罪名が暴行→傷害→傷害致死と順次訴因変更された事案です。
1審:名古屋地裁令和4年(わ)第1690号、2審:名古屋高裁令和7年(う)第143号
(軽微な)暴行に及んだことには争いがなく、ただ、暴行よりも前に被害者が高所から転落し、頭部外傷を負っていた(脳震とうを起こしていた)ことから、1度頭部に強い衝撃を受けた人が、もう1度衝撃を受けると、2度目の衝撃がそれほど強くなかったとしても、致死的な重大な結果が生じることがあるとされる病態(セカンドインパクト症候群=SIS)の影響を主張して、量刑を争いました。
1審では、検察官証人の医師(SBS/AHTで検察庁御用達の井原哲医師)の証人尋問が実施されました。
極めて偏頗的な証言態度であったものの、反対尋問では、獲得目標を獲得しつつ、偏頗的な証言態度が露見するような尋問も実施することができ、大きな手応えを感じました。
その手ごたえのとおり、1審判決(2025年3月13日言渡し)では、事実認定ではほぼ全部弁護人の主張が認められました(おかしな理由が多かったですが)。
しかし、結論は、なぜか懲役5年(求刑8年)の実刑でした。
控訴審において、控訴趣意の中心的なものは量刑不当でした(訴訟手続の法令違反、事実誤認も主張)。
暴行の程度について、1審判決の事実認定には誤りがあるが、量刑上重視したとは認められないとして、結論として、事実誤認の控訴趣意は認められませんでした。
控訴審判決(2025年8月19日言渡し)では、被害者遺族と示談が成立したことを大きな理由として、懲役5年→3年に減刑されました(上告せず確定)。
SIS=死亡結果には1度目の衝撃(≒被害者の特殊な素因)が影響しており、しかも、その影響の程度が大きいとも小さいともいえない(いうなれば1度目の衝撃:暴行=50:50)ことから、1審の時点で執行猶予を付するか否かギリギリ、示談が成立した控訴審では執行猶予が付されるべき事案だと考えていたので、残念です。