パトカーに乗って実況見分に立ち会う |古田法律事務所

事務所通信

本日,パトカーに乗る機会がありました。

経緯は,(民事)交通事故の依頼者の実況見分に立ち会うにあたり,当該事故が高速道路上で発生したものであったことから,事故現場までの移動手段として,高速隊の(覆面)パトカーに同乗させてもらったというものです。実況見分への立会いは何度も経験していますが,パトカーに乗ったのは初めてでしたので,貴重な体験でした。 

実況見分や取調べにおいて,立会人・被疑者は,警察官(検察官)による質問の意味を十分に理解しないまま,反射的に応答してしまいがちであり,それゆえに不正確な回答になってしまいがちです。例えば,「衝突地点はどこでしたか。」という質問は,必ずしも一義的なものではありません。なぜなら,実況見分時における「衝突地点」とは,①両車両の衝突箇所が存在した地点という趣旨以外に,②衝突時に(立会人が運転する)車両の運転席があった地点という趣旨でも用いられることがあるからです。そして,車両は,それ自体相当の長さ,幅がある物体ですから,①②のどちらを意味しているかによって,1,2メートルの差が生じてしまいます。そのため,質問の意味を十分に理解できていないままにする立会人の回答は,若干「ずれた」ものになってしまうことがあります。この場合,ずれた回答を前提に次の質問が重ねられていきますので,本当の認識とのずれは次第に大きくなっていきます。衝突地点がずれていれば,当然,衝突前の制動地点,発見地点,衝突後の停止地点もずれてしまい,結果,本来立会人が指示説明したかった(認識していた)内容とは,異なる実況見分調書が作成されてしまうのです。 

このような質問と回答の齟齬は,実況見分や取調べにおいてよく見られるところですが,悪意のあるなしに関わらず,警察官(検察官)によってはほとんど解消されません。何しろ,ずれていたとしても実況見分調書の内容を事前に立会人(被疑者)が確認することはありませんし,供述調書でもその場で「先ほどはそう言っていた。今になって話を変えるのか。」,「そこを変えると全部変わってしまうからやり直しで時間がかかる。」と迫って署名押印を得てしまえば,それが「正しいもの」として通用してしまうからです。 

ちなみに,本件でも「実況見分への立会いは認めるが,取調べへの立会いは認めない」ということです。

(古田宜行)

 

 

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