依頼者の「いいなりになる」弁護士 |古田法律事務所

事務所通信

依頼者の「意見を尊重する」ことと「いいなりになる」ことは,もちろん異なる。

先日,ある刑事事件に関して,いわゆる「伝書バト」になってくれないかという依頼があった。要するに,対捜査機関,対裁判所の刑事弁護は依頼しないが,外部にいる関係者との連絡役になってくれないか,というのである。刑事事件をある程度こなしていると,度々舞い込んでくる依頼である。 

しかし,私は,こと刑事事件に関しては,決して「商売」のつもりでやっていない。事件としてやりがいがあるから,やっている。そのため,例え十分な弁護士費用をもらっても,「伝書バト」をしようとは思わない。ということで,お断りした。 

別件交通事故で,相手方代理人(弁護士)から,要旨,「要求通りに支払いに応じなければ,そちらの依頼者の取引先(どうやら,相手方の取引先と共通しているようである。)に,そちらの依頼者との取引をやめるよう伝えることを検討せざるを得ない。」という内容が記載された書面が届いた。

心底,呆れてしまった。 

交通事故に基づく損害賠償交渉で自らの意見を通すために,交通事故とは全く無関係の第三者に取引をやめるように通知するというのは,「脅し」以外の何物でもない。いわゆる「素人」が「脅し」をかけるのならば,まだ理解できる(というかよくある。)。しかし,相手は弁護士である。果たして,相手方代理人は,どのような思いでこの書面を作成し,弁護士である私に対して送付したのだろうか。躊躇は覚えなかったのであろうか。交通事故とは全く無関係の第三者に「取引をやめるように伝える」ということが,「脅し」にあたらないと思って記載したという弁解は,さすがに無理がある。「脅し」を記載した書面を,弁護士である私に送ってしまうことで,言い逃れができない証拠が残ってしまうことに,危機感を覚えなかったのであろうか。 

相手方代理人の依頼者が,相手方代理人を脅迫して上記「脅し」を記載させたというのであればギリギリセーフかもしれない(が,やはり当方を巻き込んでいる時点でアウトだろう。)。「超重要顧客」の要望だったので,事務所の経営上逆らえず「いいなり」になって従ってしまったというのであっても,もちろんアウトである。万が一,相手方代理人の依頼者が,依頼者から聴取した事実を踏まえて,自身の「交渉術」として記載したのであれば,直ちに弁護士をやめた方が良い。 

弁護士の業務では,個性が強い依頼者と接することも多い。「いいなりなる」ことによって,その場では依頼者との衝突を回避することができるかもしれない。結果,依頼者からの印象が良く,経営面ではいい方向に働くかもしれない。しかし,一度でもそのようなことがあれば,業務に取り組む全体的な姿勢を左右しかねない,致命的なことであるように思える。 

私が「いいなりになる」 ことは,これまでなかった(と思う)し,今後もない(と思う)。

(古田宜行)

 

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